2019年5月21日火曜日

歴史資産は「保存」から「活用」へ

せとうち古街計画

空き家になった古民家をリノベーションして活用する”せとうち古街計画(Setouchi Cominca Project)”の取り組みについて、瀬戸内ブランドコーポレーションの方にご案内いただきました。場所は愛媛県内子町と広島県庄原市。正直どちらも訪れるのも、地名を聞くのも初めてでしたが非常に魅力的な場所でした。

このプロジェクトは、瀬戸内地域に点在する日本の歴史的価値を持つ古民家の魅力を生かして、快適に過ごせるように現代的にリノベーションを施し、活用していくというプロジェクトです。欧米では家やビルは改修を繰り返しながら残していこうとする傾向がありますが、日本では首都圏を中心に街を新しく開発していくという意向が強く、古い民家やビルが壊され、近代的な建物に生まれ変わっています。しかし、古民家には日本情緒があるだけでなく、歴史や文化そのものの象徴でもあります。それらを安易に取り壊してしまうのではなく、リノベーションによって価値を高め、観光資産としても活用しながら後世につないでいくことは素晴らしい取り組みだと思います。


白壁の町屋が建ち並ぶ内子、自然を五感で感じる庄原

内子町には国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている場所があります。白壁の古民家が立ち並ぶその地区は、江戸時代から明治時代の街並みが残され、まるで当時にタイムスリップしたような雰囲気です。ひとつひとつの古民家は、まだ住居として利用していたり、カフェや雑貨店、宿泊施設などに生まれ変わっているものもありました。その中の宿泊施設のひとつ”織”に滞在しましたが、中は綺麗に改装され、とても快適な生活空間になっています。長期滞在もできるようにキッチンもついていて、貸別荘やコンドミニアムをイメージさせます。

一方、庄原は周囲を山に囲まれ、見渡す限り田んぼと畑が広がっているのどかな農村で
す。耳をすませば、蛙や鳥の鳴き声、風で木々が揺れる音や、近くの沢を流れる水の音が聞こえ、自然を五感で感じることができます。その中に突如あらわれる集落の何軒かの古民家も、今回のプロジェクトの物件で、9月のオープンに向けてリノベーション工事をしています。ここで一体何をするの?と思う人もいるかもしれませんが、ここでは何もしない贅沢を味わう場所なんだと思います。日本人は旅でたくさんの予定を詰め込みがちですが、欧米人はホテルで一日中ぼーっとしたり、本を読んで過ごしたりする余暇を楽しむ人も多く、そういう人には最適な場所だと感じました。


歴史資産の維持活用は旅の魅力を高める重要な活動

先日オープンした、別府のサテライトオフィスも、廃業した旅館をリノベーションしてオフィスに生まれ変わった場所です。近くには、同じく旅館だったところをギャラリーにしたり、かつて郵便局だった建物をカフェとして活用したりしており、私がこの場所に惹かれたのは、こうした歴史的建造物を維持、活用していこうとする取り組みに共感したからでもあります。

その土地の歴史に触れるということは、温泉旅の楽しみのひとつだと思います。都会の喧騒から離れ、過去にタイムスリップしたような街並みや建物を眺め、その土地の人との会話を楽しみながら歴史や文化に触れる。そんな魅力的な旅を楽しんでもらうためにも、歴史資産を保存するということだけでなく、新しい価値を埋め込んで活用するという動きはとても大切なことだと再認識しました。

皆さんも、機会があれば内子、庄原に行って、その土地の歴史や文化、自然を感じてみてください。また、サテライトオフィスに行った際にも、オフィス内の細部に残されている彫刻や、周辺の街並みにも注意してみてくださいね。



あとがき

①先日食事をしたレストランで領収書をお願いしたら、日付のところに、"1. 5.20"と書いてありました。そう、今は令和1年なんですね。まだ慣れない感じ。。。

②前職のお客様の義妹さんが、別府サテライトオフィスasideを運営する長谷川さんの友人だった。先日のGWのトリニータ戦後に私のFBに友達申請をしてくださったトリニータファンの方が、鉄輪温泉の旅館「入舟荘」の女将さんの友人だった。ひとつの場所で色々な取り組みを始めると、点と点のつながりから、面のつながりに変わっていくことを感じています。